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私のかたちを書き留める

27  泥んこ姿の息子におもうこと

近所の幼稚園へ、2歳児保育の説明を聞くのため行ってきた。

体を使ってのびのびと遊ばせる方針の園。

子どもたちが園庭を走り回っていた。

息子は園庭に入るなり駆け出して小さな滑り台に登り、我がもの顔で滑り降りた。

それからは、私が止めるのを無視してひたすら遊ぶ。

先生は「どうぞ遊ばせてください。大きな子もいるので、危ない時は止めてくれますよ」と、息子の近くにいた女の子たちに、様子をみてくれるよう言ってくれた。

私が園舎の中で話を聞いている時も、滑り台を滑ったり、砂山をスコップで掘ったり、どこから持ってきたのかフライパンを抱えて砂を運んだり…。

初めて来た場所とは思えない、堂々とした遊びっぷり。

息子はほんの赤ちゃんの頃から、人見知りも場所見知りもほとんどしなかった。

興味があるものがあれば、もくもくと一人で集中して遊ぶ。

私が近くにいると一緒に遊ぼうと誘ってくるが、いないならいないで平気なようだ。

最近は、周りの子どもが気になるようで、今日も近くにきた子に話し掛け、後ろについて走っていた。


昨年まで1年間、息子は保育園に通っていた。

少人数の家庭的な園で、先生達は息子の成長を楽しんでくれ、小さなお兄ちゃんお姉ちゃん達が息子を可愛がってくれた。

同じくらいの月齢の男の子が息子を入れて3人いた。

1歳ごろからお互いを意識し始めて、登園の時はお迎えに来てくれたり、おもちゃの取り合いをしたり、言葉にならないおしゃべりをしたり、ころころと関わりあって毎日過ごしていた。

赤ちゃん同士でも関わり合いってあるんだな、と驚いて、微笑ましくみていた。

お迎えの時間は外で砂遊びをしていることが多くて、その時ももくもくとシャベルで砂をバケツに入れたり、穴を掘ったりして集中して遊んでいた。

帰ろうと誘っても、なかなか帰る気になってくれなかった。


専業主婦になって半年。

息子と一緒に長い時間いられるようになった。

どんどんと言葉が増え、出来ることが増えて行く様子を全部見られることが楽しい。

その反面、時々保育園に通わせていた時の様子を思い出す。

二人でお散歩をして、公園の遊具で遊ぶのも息子は楽しんでいるだろう。

ママといつも一緒にに居られるのも嬉しいだろう。

でも、息子を目一杯遊ばせられてるかという面では、保育園の頃の環境には足りないと思うのだ。

公園遊びでは、子ども同士の関わり合いの間に、どうしても大人が入り込んでしまうこと。

雨の日や寒い日は室内にこもりがちになってしまうこと。

息子が好きな泥んこで遊ばせたいと思っていても、私も一緒に泥んこ遊びをする気持ちになれず、避けてしまうこと。

そういうことを考えると、私の力は保育園での遊びに及ばないものがある。

保育園の良さも専業主婦の良さも知ったから、息子にとって(私にとっても)最善の環境を考えたい。


先生達と話をしていた1時間半、息子は休むことなく園庭で遊び続けた。

先生と一緒に大きな砂山のてっぺんまで水を入れたポリタンクを持って運んだ。

砂と水を混ぜてケースに詰め、ひっくり返してケーキにしようとしたのだけど、なかなか出てこないのでやめた。

ケーキがいつのまにか熱いスープになり、ふぅふぅして飲む真似。

服も手も顔まで泥だらけになった様を見て、うちの息子はこんなに遊べるんだと感動した。


帰り道、すごいね〜、たくさん遊んだね〜と母の感動を話したが、息子は知らん顔。

泥だらけのまま抱っこを求められ、通りがかった公園で更に遊ぼうと求められ、息子の尽きないパワーに母はノックアウトされてしまった。